取り組もうCSR

年次有給休暇の時季変更権


知っているようで知らない、わかっているようでわかっていない、職場のさまざまな問題を、社会保険労務士がCSRの観点から解説します。
今回は「年次有給休暇の時季変更権」です。  


社長 「年休のことでちょっと困っているのだが・・・。実は、先日、社員から年休がとりにくいと相談があり、話を聞いてみると、年休をとるのに理由を書かないといけないからと言われたのだが、会社としては、理由を知っておくのは当然だと思うのだが。」

社労士 「確かに会社としては社員が休む理由を知っておきたいですよね。しかし、年次有給休暇の利用目的は労働者の自由なんですよ。たとえば、使用者が年休の利用目的によって年休を不承認とすることは、できないわけです。」

社長 「そうなのか! それでは会社は業務に支障が出て困るな・・・。確か、会社には時季変更権というのがあったな。」

社労士 「ありますね。ただし・・・。」

まず年次有給休暇のキホンを

年休の基本
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労働者の年次有給休暇の時季指定と使用者の時季変更権

 年次有給休暇は計画的付与(下記参照)を行う場合を除き、労働者の指定する時季に与えなければなりません。年休について、使用者が承認あるいは許可をするということはありません。
 ただし、労働者が指定した時季に年休を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に変更することができます。これを時季変更権の行使といいます。
 この時季変更権は、単に「仕事が忙しいから」という程度の理由で行使することはできません。事業の規模、種類、労働者の仕事の内容・代替可能か否か等を考慮して客観的に判断するものとされています。

 「業務が忙しいので年休がとれない」、「まわりに迷惑がかかる」、「あとで忙しくなる」、「誰もとらないから取りにくい」というお話はよく聞かれるところです。しかし、年休は日頃の疲労回復やリフレッシュなどのための労働者の権利ですし、また、ワーク・ライフ・バランスという観点からも、年休の取得促進や年休を取りやすい職場環境を整備することが重要になっています。

 年休取得促進の方法として、年休の計画的付与の制度があります。

年休の計画的付与 

 年休の計画的付与は、労使間で話し合いを行い、労使協定を締結した場合、労働者の年次有給休暇日数のうち5日を超える部分については、その協定で定めた時季に年次有給休暇を与えることができます。
 つまり、5日までの日数については労働者が自由に使え、5日を超える日数については、あらかじめ労使協定により与える時季を決めて、計画的に付与できるという制度です。

 計画的付与の方式として、以下のものがあります。
  1. 一斉付与方式:企業・事業場全体を一斉に休みにして、全従業員に同一の日に年次有給休暇を与えます。
  2. 班別による交替制付与方式:従業員を班やグループに分け、交替で年次有給休暇を与えます。
  3. 個人別付与方式:年休計画表により個別に年次有給休暇を与えます。
 ただし、1.などの場合、新入社員など年休が全くない者や日数が足りない者に対しては、特別に付与したりするなどの措置が必要になります。

年休の計画的付与の協定例
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★年休の付与単位
 年次有給休暇は、原則的に1日を単位としますが、労働者が希望し、使用者が同意した場合は半日単位という付与方法も認められます。なお、労働基準法の改正で、時間単位の年休取得ができるようになりました。

労働基準法の改正により、平成22年4月1日より、労使協定を締結すれば、年5日を限度として、労働者が希望することを前提に、時間単位で年次有給休暇の付与・取得が可能になりました。
この場合に、労使協定で、時間単位で年休を与える対象となる従業員の範囲、時間単位で与えることができる年休の日数(年5日が限度)などを定める必要があります。

(社会保険労務士 古川裕子)


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