取り組もうCSR

職場におけるパワーハラスメントについて


知っているようで知らない、わかっているようでわかっていない、職場のさまざまな問題を、社会保険労務士がCSRの観点から解説します。
今回は「職場におけるパワーハラスメントについて」です。  


社長「先日聞いたパワハラ対策だが、規程は作成するつもりだが、会社としては他にどのようなことをしておかなければならないかな。」

社労士「そうですね、パワハラは業務上の指導との線引きが難しいので、管理職の方に研修をしておかれたほうがいいですね。」

社長「なるほど、規程は作ったが、運用ができていないと困るからな。」

社労士「それから、社長が朝礼等で会社の取組方針について話をされたらどうでしょう。」

社長「なるほど。そのためにも少し勉強しておかなければならないな。」

社労士「そうですね。パワハラの定義や行為類型についてまとめられたものがあります。」

 職場においては、業務を円滑に進めるために、管理職に一定の権限が与えられています。時には、必要に応じ部下に対して指導・叱責が行われますが、何がパワハラになるのか不明確な部分もあり、業務上の指導との線引きが難しいと言われています。
 厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」ワーキング・グループは、平成24年1月に円卓会議への報告を取りまとめ、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた労使や関係者の取組を支援するために、その概念や取組例について整理しています。そして、平成24年3月に、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が円卓会議から出されました。今回はこの報告書・提言の内容からパワハラについて勉強しましょう。

そもそもパワハラとは?

 「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」という言葉は、どのような行為がこれらに該当するのか、人によって判断が異なる現状がある。そのため、どのような行為を職場からなくすべきであるのかについて、労使や関係者が認識を共有できるようにすることが必要である。そこで、職場で行われる以下のような行為について、労使が予防・解決に取り組むべきこと、そして、そのような行為を「職場のパワーハラスメント」と呼ぶことを提案する。(報告書より抜粋)

パワハラの定義
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 職場のパワーハラスメントに当たりうる行為類型としては、以下のものが挙げられています。(ただし、当たりうる行為の全てを網羅するものではありません。)

パワハラの類型
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 ①は、業務の遂行に関係するものであったとしても、「業務の適正な範囲」に含むことはできません。一方、②と③については、通常、業務の遂行に必要な行為とは想定できず、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。
 ④から⑥については、「業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられます。こうした行為について何が『業務の適正な範囲を超える』かについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分もあると考えられます。そのため、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にする取組を行うことが望ましい」と指摘されています。

どのようにしたらパワーハラスメントをなくすことができるか

 職場のパワーハラスメントをなくしていくために、まず取り組むべきことは、企業として「職場のパワーハラスメントはなくすべきものである。」という方針を明確に打ち出すことです。そうすることにより、相手の人格を認め、尊重し合いながら仕事をしようという職場内の意識を高めることにつながるからで、職場の一人ひとりがこうした意識を持つことこそ、対策に実効性を与える鍵となります。さらに、組織の方針が明確になれば、パワーハラスメントを受けた人や周囲の人たちが、この問題に対して発言しやすくなり、結果的に取組の効果もより期待できるようになるはずであると指摘されています。

 職場のパワーハラスメントをなくすため、すでに対策に取り組んでいる企業・労働組合の主な取組の例として下記の取り組みが紹介されています。 

【職場のパワーハラスメントを予防するための取り組み】

  • トップのメッセージ
     組織のトップが、パワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確にする 。
  • ルールを決める
     就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する。
     予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。
  • 実態を把握する
     従業員アンケートを実施する。
  • 教育する
     研修を実施する。
  • 周知する
     組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。

【職場のパワーハラスメントを解決するための取り組み】 

  • 相談や解決の場を設置する
     企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める。
     外部専門家と連携する。
  • 再発を防止する

 なお、取組を始めるにあたって留意すべきことは、職場のパワーハラスメント対策が上司の適正な指導を妨げるものにならないようにするということである。上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、上司としての役割を遂行することが求められる。(報告書より抜粋) 

叱責

社長「なるほど。パワハラを生み出さない職場環境にしておくのが一番だな。」

社労士「おっしゃるとおりです。残念なことにパワハラが起こったとしても早期に発見されれば早期に解決できます。そのような相談をしやすくすることが大切です。なお、解決に向けての組織体制や再発防止体制も必要です。」

社長「なるほど。パワハラは被害を受けた人だけでなく、職場環境も悪化するし、従業員のモチベーションも下がるし、よくないことしかないからな。」

社労士「その通りですね。上司の方もこの言い方はパワハラになるのではないか等、悩まれ、適切な指導ができなくなる場合もありますから。」

社長「そうだな。わが社もさっそくパワハラ防止の取り組みをすることにしよう。」

(社会保険労務士 古川裕子)


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