知っているようで知らない、わかっているようでわかっていない、職場のさまざまな問題を、社会保険労務士がCSRの観点から解説します。 今回は「職場におけるパワーハラスメントについて」です。 |
①は、業務の遂行に関係するものであったとしても、「業務の適正な範囲」に含むことはできません。一方、②と③については、通常、業務の遂行に必要な行為とは想定できず、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。
④から⑥については、「業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられます。こうした行為について何が『業務の適正な範囲を超える』かについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分もあると考えられます。そのため、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にする取組を行うことが望ましい」と指摘されています。
職場のパワーハラスメントをなくしていくために、まず取り組むべきことは、企業として「職場のパワーハラスメントはなくすべきものである。」という方針を明確に打ち出すことです。そうすることにより、相手の人格を認め、尊重し合いながら仕事をしようという職場内の意識を高めることにつながるからで、職場の一人ひとりがこうした意識を持つことこそ、対策に実効性を与える鍵となります。さらに、組織の方針が明確になれば、パワーハラスメントを受けた人や周囲の人たちが、この問題に対して発言しやすくなり、結果的に取組の効果もより期待できるようになるはずであると指摘されています。
職場のパワーハラスメントをなくすため、すでに対策に取り組んでいる企業・労働組合の主な取組の例として下記の取り組みが紹介されています。
【職場のパワーハラスメントを予防するための取り組み】
【職場のパワーハラスメントを解決するための取り組み】
なお、取組を始めるにあたって留意すべきことは、職場のパワーハラスメント対策が上司の適正な指導を妨げるものにならないようにするということである。上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、上司としての役割を遂行することが求められる。(報告書より抜粋)
社長「なるほど。パワハラを生み出さない職場環境にしておくのが一番だな。」
社労士「おっしゃるとおりです。残念なことにパワハラが起こったとしても早期に発見されれば早期に解決できます。そのような相談をしやすくすることが大切です。なお、解決に向けての組織体制や再発防止体制も必要です。」
社長「なるほど。パワハラは被害を受けた人だけでなく、職場環境も悪化するし、従業員のモチベーションも下がるし、よくないことしかないからな。」
社労士「その通りですね。上司の方もこの言い方はパワハラになるのではないか等、悩まれ、適切な指導ができなくなる場合もありますから。」
社長「そうだな。わが社もさっそくパワハラ防止の取り組みをすることにしよう。」