知っているようで知らない、わかっているようでわかっていない、職場のさまざまな問題を、社会保険労務士がCSRの観点から解説します。 今回は「職場のセクハラ・パワハラ防止の対策のために 」です。 |
*職場のパワハラとは 職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。 ※ 上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。 (厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」報告書より抜粋) |
■「職場」とは
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所です。労働者が通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば職場に含まれます。
<職場の例>
取引先の事務所、取引先との打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(営業職等)、取材先(記者)、出張先、業務で使用する車中(営業、バスガイド等)等
*勤務時間外の「宴会」等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行う必要があります。
■「労働者」とは
「労働者」とは、いわゆる正規労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規労働者を含む、事業主が雇用する労働者のすべてをいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)についても規定が適用され、派遣先事業主は、自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
■「性的な言動」とは
「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動をさします。
<性的な言動の例>
○性的な内容の発言
性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、意図的に性的な噂を流布する、個人的な体験談を話す、性的な事実関係を尋ねるなど
○性的な行動
性的な関係の強要、身体への不必要な接触、強制わいせつ行為、強姦、わいせつ図面(ヌードポスター等)の配布・掲示など
*事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者及び学校における生徒等もセクシュアルハラスメントの行為者になり得るものであり、また、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれます。
職場におけるセクシュアルハラスメントに関し、雇用管理上講ずべき措置として指針で9項目が定められています。9項目のポイントは以下の通りです。
1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1)職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
3 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(6)事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
(7)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
4 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
(8)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(9)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。